新野 スタートアップでも、人数が少ないときは社長がプロダクトに関わりやすいのですが、会社の規模が大きくなると社長がプロダクトに直接関わるのはだんだん難しくなるように思います。お二人はどのようにプロダクトと関わっているのでしょうか。
山田 僕はチケット(注:社内のタスクを「チケット」として管理するシステムのこと)は全部目を通してるんで、何かちょっと変な方向にいきそうになったら、あれはどうなの? っていう感じで直接その人に確認したりもするし、直接チケットに書くってこともあります。
それから役員とかマネージャー層にはかなりずっと、ずっとといっても会社の歴史が2年もないわけですが、一緒にやってきて、大体こういうのは良くないんだなとか、価値観みたいなものを企業風土として醸成してこれていると思います。
新野 チケットを全部見てるってすごいですよね。
山田 結構大変なんですけどね。1日、多分400~500通位来るんで。米国オフィスもありますし、いわゆる人事とか経理とかそういうコーポレート系のやつも全部チケットで管理してるので。
田中 すごいですね。
山田 それを見れば、何がどうなっているのかっていうのは、相当分かるんですよ。僕はどちらかというと本当にプロダクトとか、PRとか表に出る数字とか、インタビューみたいなものとか、割と一応目を通して、どうしても気になる部分は自分で直したりとかします。プロダクトとか会社とかの見え方とか、そういうのをある程度コントロールしてるって感じですね。
会社の銀行の口座残高とか、任せられるとこは全部任せて、自分は本当にプロダクトや会社の見せ方、そしてリクルーティングが相当重要だと思ってるんで、そういうところに特化してやってるって感じですね。
新野 田中さんはいかがですか。
田中 私自身は、社風の維持に対してそんなに気を払ってこなかったんですけど、その分自分でサービスに関わるというかたちを続けてきたんですね。なのでサービスがおかしくなる前にいちいち口を出していたって感じなんです。
けれどもさすがに会社の売り上げが100億を超えるとそういうことができなくなって、いわゆる100億の壁ってよくいわれますけれども、超えたあたりでちょっとつらいなと。なので、サービスごとに、例えばクラウド、VPS、専用サーバなどはうちの副社長に全部任せてですね、今は基本そんなに見ていないんです。
何か気がついて言うときも、うちのコーポレートビジョンと照らし合わせて、価値観のほうから言うようにしていますね。
ただ、例えばさくらのレンタルサーバは今年で10年なんですけども、もうあまり変化が無い状態になってるんですね、それに関しては私が責任者として返り咲くと。特定の分野に関しては深くコミットしてイノベーションをしていこうとしています。
新野 今、社長の田中さんがレンタルサーバの責任者なんですね。
田中 そうですね。7月からやってますね。
山田 良いですね。元祖ですよね。僕も99年位からずっと使ってます。
田中 ありがとうございます。
田中 実は、社名と事業内容が18年間も変わらないIT企業ってあまりないんですよね。いまだに当社はサーバー屋ですから、社内の人間がみんなサーバー屋としての魂みたいなものが染み付いてるんですね。
でも私はWebサービスのほうも好きなんですね。インフラやサーバーは手段なんですね。手段にこだわる思いもあるので当然そこにはすごくコミットするんですけれど、やっぱり一番重要なのはサービスの部分です。そこは私自身が引っ張っていって、これから人材を作っていかないとと思っています。ここ5年位はずっとインフラのほうに私の時間をコミットしてきたので、そろそろそこのあたりを他の人に任せて、上のレイヤをしっかりやっていきたいと考えています。