http://tanaka.sakura.ad.jp さくらインターネット創業日記: 2011年2月アーカイブ

2011年2月アーカイブ

最近、IaaS型クラウドの流行の裏で、VPSがひそかな人気を集めています。
VPSは、クラウドのような従量課金やAPIアクセス、柔軟なリソース増減はできませんが、その分安価な価格設定が行われることが多く、数ヶ月以上利用するのであればクラウドよりも非常に安価で高いパフォーマンスを得られることが特徴です。
また、コントロールパネルで起動、停止、再起動などの操作や、OS再インストールなど、クラウドで言うところの「セルフサービスによる」という部分は多くのVPSで実現されており、さくらのVPSに限ってはコンソールをホストOS経由で直接アクセスできるなど、物理サーバの置き換え用途としても十分に利用できる内容となってきました。
さらに、申し込みから利用開始まで数分から数十分程度で行えるなど、従量課金ではないことと解約が手動となる点を除けばIaaS型クラウドに決して劣るものではありません。

ただ、たくさんのVPSが各社から提供され、なかなか選べないよという方も多いのが実情です。
今回は、さくらのVPSのほか、話題を呼んでいる日本ラッドさんのSaaSes Osukini Serverと、DTIさんのServersman@VPSを取り上げ、それぞれのVPSについて比較をしてみました。
いちおう公平に書くようにしましたが、色眼鏡で見ていただいても結構です。m(_ _)m

それでははじめに各社の仕様をまとめてみます。

プラン名 さくらのVPS Osukini Server Serversman@VPS
512 1G 1.5G 4G 8G LT ST GT XT Entry Standard Pro
初期費用(円) 0 2,980 4,980 9,980 19,980 6,000 6,000 10,000 14,000 0 0 0
月額(円) 980 1,480 1,980 3,980 7,980 450 980 1,980 4,980 490 980 1,980
年払い割引 1か月分割引 なし なし
試用期間 2週間 2週間 記載なし
(キャンペーン対応)
メモリ容量 512MB 1GB 1.5GB 4GB 8GB 512MB 1GB 2GB 4GB 256MB 512MB 1GB
HDD容量 20GB 30GB 50GB 120GB 240GB 50GB 100GB 200GB 400GB 10GB 30GB 50GB
SWAP設定 ×
リモート
コンソール
× ×
固定IP v4
v6 × ×
追加IP ×
月額500円
×
1個

3個
IP逆引き
制限あり
仮想化プラットフォーム KVM完全仮想化 Xen完全仮想化 OpenVZコンテナ
OS CentOS
Debian
Ubuntu
Fedora × ×
FreeBSD × ×
現在のキャンペーン
今なら初期費用半額 今なら最大2か月分を無料に
その他の制約等 試用期間中は2Mbps制限
試用期間中はOP25Bあり

VPN設定不可
iptablesエントリ数の上限あり
※Serversman@VPSは、ウェブサイト上にて最大メモリの表記がありますが、あくまでも保障メモリで比較しています。


これではわかりにくいので、一番の関心事であろう価格について、それぞれ初年度にいくらかかるかを比較してみましょう。
また、メモリ1MBあたりの単価、HDD 1GBあたりの単価も見てみます。

プラン名 さくらのVPS Osukini Server Serversman@VPS
512 1G 1.5G 4G 8G LT ST GT XT Entry Standard Pro
年間の利用額(円) 10,780 19,260 26,760 53,760 107,760 11,400 17,760 33,760 73,760 5,880 11,760 23,760
メモリ1MBあたり(円) 21.0 18.8 17.4 13.1 13.2 22.3 17.3 16.5 18.0 23.0 23.0 23.2
HDD 1GBあたり(円) 539.0 642.0 535.2 448.0 449.0 228.0 177.6 168.8 184.4 588.0 392.0 475.2


ここで、グラフ化してそれぞれのプランがどのような位置にあるのかを見てみます。
まず、メモリの容量を横軸にした価格帯です。
VPS価格比較
導入費用が絶対価格で最も安いのはServersman@VPSのEntryプランですが、概ね価格帯は似通っているといえます。
低スペック帯では唯一256MBモデルを出しているServersman@VPSが安価であり、512MBあたりでは3社とも同様の価格となり、高スペック帯ではさくらのVPSがもっとも安価ということがわかります。

次に、HDD容量を横軸にした価格帯を見てみましょう。
VPS価格比較
総じていえるのは、Osukini Serverが飛びぬけて大容量であるということでしょう。
例えば、1万円の場合にさくらのVPSは20GB、Serversman@VPSは30GBのところ、Osukini Serverは50GBと大幅に大きいことがわかります。

ちなみに、キャンペーン適用した価格はどうなのか?1年を超えると結果は違うのでは?との質問もあったので、いちおうグラフを作りました。正直なところずっとキャンペーンをしている事業者は不公正だし信用できないので加味する必要性を全く感じませんが、信頼性がないとか言われても嫌なので参考までに。

結果的には大して変わりませんでした。
結局、低スペック帯ではServersman@VPSが価格優位なこと、SaaSesが価格に対してHDDが大容量なこと、高スペック帯ではさくらのVPSが価格優位なこと、それぞれ変わることはありません。
ただ、Serversman@VPSは期間が長くなると価格メリットが薄れてくるようです。

それでは気をとりなおして、最後にベンチマーク比較を見てみましょう。
既にこれらのVPSサービスの利用者の方がunixbenchで計測されていますので、その情報を見てみたいと思います。
それぞれ、「さくらのVPS unixbench」「Saases unixbench」「serversman unixbench」とGoogleで検索して出てきたページから抜粋しています。

VPS性能比較
これを見ると、さくらのVPSが1200から1500程度、Serversman@VPSがEntryで200から400程度、Standardで400?800程度で、Osukini ServerがLTとSTともに600程度です。
unixbenchだけでは結果はわかりませんが、数字を見る限りさくらのVPSが飛びぬけて性能がよいのは間違いなさそうです。

ただ、性能だけを見ても仕方が無いので、価格性能比をマッピングしてみましょう。
VPS性能比較
やはり性能についてはさくらのVPSが良いですが、興味が惹かれるのはServersman@VPSです。Osukini Serverが価格が上がっても性能が変わらないのに対し、Serversman@VPSはプランごとに性能が変わっているうえ、TurboモードをONにすることによる性能の向上が見られます。
完全仮想化の場合はゲスト空間が利用者に全て委ねられるのに対し、OpenVZの場合はCPU性能をコントロール出来るというのが寄与しているものと思われます。

それでは、ここでまとめにしたいと思います。
比較を実際にしてわかったのは、各社各様に特徴があるなというところで、本当はさくらのVPSを推したいところですが、そうは甘くないようです。
ということで各社の特徴をまとめてみました。

  • さくらのVPS
    • 高スペックプランになるほど、コストパフォーマンスがよくなる
    • リモートコンソールが利用できる
    • サーバ性能が飛びぬけて良い
    • 利用できるOSが多い
    • 初期費用が無い(980プランのみ)
  • Osukini Server
    • HDD容量が飛びぬけて大きい
  • Serversman@VPS
    • IPv6が利用できる
    • IPv4が複数利用できる(StandardとProのみ)
    • 低スペックプランがラインナップされ、最も安い
      (過去のキャンペーン適用者で、Entryを月105円で利用できてる人もいるらしい)
    • 運が良ければ保障以上のメモリを使える(但しプロセスがしばしばkillされる)
    • 初期費用が無い

私の結論としては、

  • スペックや性能が低くてもとにかく安くということでは、Serversman@VPS
  • HDD容量が欲しければ、Osukini Server
  • HDD容量はそこそこで良く、月に980円以上出せるのであれば、さくらのVPS
というところでしょうか。

なお上述のとおり、ある程度の値段になると、Osukini Serverか、さくらのVPSという選択肢しかなく、スワップが利用できることも考えると、本格運用の場合には Osukini Server か、さくらのVPSの2択かなと思います。
本当はさくらのVPSだけを推したいところでしたが、さすが岡田さんだけあってOsukini Serverも良くできているという印象です。

また今後、Amazon Web Servicesや、Linodeなども取り上げる予定ですが、皆さんからもご意見などいただければ幸いです。

本日、双日株式会社によるさくらインターネット株式のTOBが発表されました。
また、当社取締役会はTOBに対して賛同意見を出しております。

さくらインターネット: 双日株式会社による当社普通株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明及び同社との業務提携契約書の締結のお知らせ
双日: さくらインターネット株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

今北産業で表現すると

  • 約30%の株式を持つ筆頭株主の双日株式会社が、約10%の買い増しを行い、約40%まで出資比率を引き上げる。
  • これにより、双日株式会社が約40%、私個人の資産管理会社(株式会社田中邦裕事務所)が約10%、私個人が5%となり、過半数(約55%)が安定株主となる。
  • 双日株式会社は、株式会社田中邦裕事務所と株主間協定を結び、さくらインターネットを子会社化する

ということです。

以下に、質問の多そうなところをまとめておきます。

  • 双日株式会社は現在約30%の株式を持つ筆頭株主であり、TOB成立後も引き続き約40%の株式を持つ筆頭株主です。
  • 株式会社田中邦裕事務所は株主間協定を結ぶだけでTOBに参加しません(一切株式の売却をしません)ので、TOB成立後も第2株主として残ります。(株主間合意書に基づく)
  • 取締役は、特に両者が合意しない限り、当社が4名、双日株式会社が2名を指定しますので、現在の経営体制から特に変更はありません(業務提携契約書に基づく)
  • サービスについては、今までどおりの体制で運営を続けますので、戦略を含めて特に変更はありません
  • 双日株式会社、株式会社田中邦裕事務所、私個人の持分は、合計で約55%にとどまり、東京証券取引所の上場は今までどおり維持します
  • TOB成立後は、サービス・営業分野における事業提携、海外展開における事業提携、インフラ分野での事業提携、技術分野での事業提携を目指します。

唐突な話で、皆さんにはご心配をおかけしたこともあるかと思いますが、双日株式会社はそもそも以前から筆頭株主でありますし、同社派遣の2名の社外取締役と共にサービスの拡充に努めてきた経緯があります。
1/3以上の株式を取得する際にはTOBをしなければならないという金融商品取引法上の定めもあり、大げさなことになっていますが、上述のように特に大きな経営体制の変更はありませんので、ご安心頂ければと思います。
今後は、当社の得意とする既存サービスの拡充に加え、一般企業向けサービス拡充を通じて、さらなる成長を目指しております。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

自己紹介

本名:田中邦裕/1978年生まれ
1996年にさくらインターネットを創業しホスティングサービスを開始。 98年に有限会社インフォレスト(2000年に解散)設立後、翌年にさくらインターネット株式会社を設立して社長に就任。
05年に東証マザーズに上場
kunihirotanakaをフォローしましょう

このアーカイブについて

このページには、2011年2月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2011年1月です。

次のアーカイブは2011年3月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.04