
広告効果測定システム「アドエビス」や、オープンソースのEC構築ソフトウェア「EC-CUBE」で広く知られる株式会社ロックオン。
極めて高い可用性と高速処理の両立が求められる同社のサービスを裏で支える、さくらのデータセンター基盤について、その選択経緯や活用法、今後に期待することを伺いました。
ネット広告の効果測定ソリューションのさきがけ「アドエビス」
大阪府大阪市に本社オフィスを構える株式会社ロックオン(以下、ロックオン社)は、Eコマースやインターネット広告関連のソフトウェアビジネスで急成長を遂げているベンチャー企業です。同社が開発するオープンソース製品「EC-CUBE」は、中小規模ECサイト向けのECサイト構築パッケージソフトウェアとしてはデファクトスタンダードと言っていいほどの地位を確立しているほか、広告効果測定システム「アドエビス」は国産のネット広告効果測定ツールの先駆けとして、こちらも国内シェアNo.1の実績を誇ります。
このアドエビスのほか、リスティング広告の運用プラットフォーム製品「THREe(スリー)」などを加えた「広告プラットフォーム」のビジネスが、同社のビジネスの大半を占めているといいます。近年ネット広告の世界では、新たなテクノロジーや新興ベンダーが次々と登場し、互いに激しくしのぎを削っているそうです。いわゆる「アドテク」と呼ばれるこの分野は、現在最も技術革新が目覚しい分野であり、人材の獲得合戦も激しいとのこと。
そんな激戦区で、アドエビスやTHREeといったロックオン社の製品・サービスは、国産ベンダーのトップランナーとして走り続け、今や圧倒的なシェアを獲得しています。

「アドエビスは国産初のネット広告測定システムとして2004年にリリースしましたが、もともとは、ある特定の顧客企業向けに開発したシステムで、『どの媒体に広告を出稿するのが最も効果的なのか知りたい』『ユーザーがサイト内でどんな行動を取っているのか知りたい』といったユーザーニーズに応えるために、機能を1つ1つ独自に実装したものでした。これをその後、パッケージソフトウェアとしてリリースしましたが、当時はまだ広告効果測定のソリューションそのものが国内で認知されておらず、まずは啓蒙活動から始めなければなりませんでした」
やがて、こうして早くからアドテクに着目し、自社製品・サービスに磨きをかけてきた成果が花開き、現在アドエビスは特定の媒体や広告ネットワークからは完全に中立の、「第三者の目線」から広告効果を正確に測定できるソリューションとして、多くの企業から高い評価を獲得しているといいます。そして同社は今や、国内のアドテク業界をリードする存在として、パッケージ製品の開発・販売からSIビジネス、コンサルティングに至るまで、幅広くビジネスを展開しています。
データセンター選びの基準は立地と価格、そして柔軟な対応力
ちなみに、アドエビスは2004年のサービス提供開始当初から、クラウドサービスとしてユーザーに提供されています。アドエビスのサービス提供を始めるにあたり、同社では幾つかのデータセンターサービスを比較検討したそうです。
「さまざまな面で複数のデータセンター事業者のハウジングサービスを比較検討しましたが、最も重要視した比較ポイントが『立地』と『価格』の2つでした。当時の弊社は、まだお金も人も限られており、わずかな人数でサービスを運用する必要があったため、少しでも近くにデータセンターが立地していた方がありがたかった。その点、さくらインターネットの堂島データセンターは弊社のオフィスに近く、まさにニーズに合致していました。またコストもなるべく低く抑えたかったのですが、この点においてもさくらさんにはいろいろと相談に乗ってもらいました」(上原氏)

サービス開始時には、堂島データセンター内にラック1基を借り、その中にサーバを数台設置する程度の規模でしたが、その後現在に至るまでの約10年の間でロックオン社のビジネスは飛躍的に成長。それに伴いインフラの規模もラック11基、サーバ200台強にまで拡大しました。この間、システムの拡張・増強のために、たびたび大掛かりな施策を講じ、そのたびにさくらインターネットには柔軟に対応してもらったと上原氏は振り返ります。
「例えば2011年に、ネットワークの冗長化を図るためにネットワーク構成をがらりと変えたのですが、その際にはさくらさんにさまざまな面で相談に乗ってもらい、かなり大掛かりなネットワーク切り替えを、ほぼ無停止で実現できました」
同氏によると、アドエビスは極めて高い可用性が求められるため、こうした手厚いサポートはとてもありがたかったそうです。
「アドエビスのシステムが停止してしまうと、クライアントのネット広告をクリックしても目的のページに飛ばなくなってしまいます。つまり、広告がまったく機能しなくなってしまうわけで、最悪の場合は損害賠償を請求される事態に発展しかねません。従って、アドエビスのインフラには極めて高い可用性が求められますが、そのための施策を講じるたびにさくらさんにはいろいろと柔軟に相談に乗っていただいているので、非常に助かっています」
今後本格化するビッグデータ要件に対応する上で期待すること
なお、アドエビスの利用料金は、広告のインプレッション数やクリック数などに応じた従量課金制となっていますが、他社の同種サービスと比べると、比較的安価な料金体系を実現しています。上原氏によれば、安価な料金体系を実現する上でも、さくらインターネットのサービスの特徴が生きているといいます。
「弊社のサービスに掛かっている原価の大部分を、ITインフラのコストが占めています。従ってインフラのコストを低く抑えられれば、お客さまに提供するサービスの価格も安くできます。この点、さくらさんにはラックと回線をまとめて安価に提供いただいており、そのおかげで弊社のお客さまにもアドエビスをはじめとする各種サービスを安い料金で提供できています」
さくらのデータセンターサービスを採用したことで実現したコストメリットと、先ほど挙げた高い可用性。この2つがそのまま同社のサービスの強みに直結していますが、今後はさらにこれらに加えて、高い処理性能や大容量のキャパシティがシステムにより求められてくるだろうと同氏は予想しています。
「弊社ではアドエビスやTHREeを、広告プラットフォームを形成するサービスの一部として位置付けています。弊社が提供する広告プラットフォームでは、ネット広告関連のデータだけでなく、リアルビジネスのトランザクションデータや顧客情報なども含めた幅広い情報を一元的に扱うことを目指しています。例えばECサイトの会員データや、リアル店舗のPOSデータなどを取り込み、ネット広告の効果測定データとひも付けることで、より高度な効果分析が可能になり、その分析結果を生かして顧客1人1人に最適化したよりきめ細かなクリエイティブ提供が可能になるのです」
こうなってくると、扱うデータ量が飛躍的に増加するのはもちろん、異なる種類のデータをひも付けて、互いの関連性から新たな知見を探るような取り組み、いわゆる「ビッグデータ分析」のような要件も自ずと出てきます。事実、同社では既にHadoopを使ったビッグデータ処理基盤を稼働させており、近いうちにこれを増強して「10分間で120億件」という極めて高い処理性能の達成を目指しているといいます。そしてこの目標を達成するためには、さくらインターネットのサポートが欠かせないと上原氏。

「これだけの処理性能を達成するためには、今後はこれまで以上のペースでインフラの規模を拡張していくことになります。それをより効率的に、かつコストを抑えながら実行していくには、さまざまな点に考慮する必要があります。例えばハードウェアの選定1つとっても、従来の業務システムやWebアプリケーションとは違った観点から製品を選ぶ必要が出てきます。それに伴いデータセンターの設備にも、こうした新たな類のハードウェアを効率的に設置・稼働できる能力が求められてくると思います。こうした点についても、これまで通りさくらさんに柔軟に相談に乗っていただきながら、次世代の広告プラットフォームを実現していきたいと考えています」
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