
株式会社オービックのグループ会社の1社である株式会社オービックオフィスオートメーションは、パッケージソフトウェアの販売・サポートからオフィス機器の販売・保守やオフィス移転・工事の支援まで、あらゆる分野に渡って中堅・中小企業のビジネスを支援するソリューションをワンストップで提供している。
中でも、同じオービックグループのOBC(株式会社オービックビジネスコンサルタント)が開発する中小企業向け会計パッケージのベストセラー製品「勘定奉行」の販売・サポートは、オービックオフィスオートメーションが手掛けるさまざまな事業の中でも、極めて重要な位置を占めている。しかし、昨今の会計パッケージ市場は新規導入需要が一巡し、収益を持続的に確保するのが難しくなってきていると、同社 オフィスシステム営業部 次長 齊藤功氏は述べる。
「新規需要が減りつつあることに加え、どの製品も基本機能にほとんど違いはないため、差別化も図りにくい。従って収益を上げるためには、顧客にとって有益な付加価値をいかに提供できるかが鍵を握る」
そんな中、近年この分野で注目度が高まっているのが、クラウドを使ったソリューションだ。特に、ITの専門要員を社内で確保することが難しい中堅・中小企業にとって、サーバやストレージといったITリソースを自社で保有・運用する必要がないクラウドは、極めて利用価値が大きい。
オービックオフィスオートメーションでも、大手通信系ベンダーが提供するIaaS基盤を使った勘定奉行のクラウド提供を、2010年から開始している。これは、仮想サーバ環境上に勘定奉行をセットアップし、さらにシマンテックのアプリケーション仮想化ソフトウェア「XenApp」を使って、クライアント画面のデータをインターネット経由でユーザーのPCに転送するというものだ。
ただしこうしたサービス提供形態には、幾つかの問題点もあった。その最たるものの1つが、ソフトウェアライセンスの問題だったという。

「奉行シリーズにはMicrosoft SQL Serverがバンドルされているが、これを仮想環境上で動かし、機能をユーザーに提供するためには、オンプレミスでの利用とは異なるライセンス契約をマイクロソフトと結ぶ必要がある。この手続きをクリアするのに、思いのほか手間取ることになってしまった」(齊藤氏)
また、奉行シリーズのユーザーにとっては、必ずしもクラウドのメリットが十分に生かされるとは限らないことも分かってきた。クラウドを使う最大のメリットの1つは、ITリソースを迅速に調達し、柔軟にシステムのキャパシティーを増減できる点にある。しかし、奉行シリーズのような小規模業務アプリケーションの場合、急激にユーザー数やデータ量が増えたり、あるいはシステムを今すぐ立ち上げなければいけないようなケースは極めて稀だ。
「クラウドのメリットが、実質的にはメリットにならないケースも多々あった。従って、クラウドや仮想化にこだわることなく、物理サーバ環境を使ったサービスも選択肢に加える必要があると考えていた」(齊藤氏)